日本で作るタイ料理が“何か違う”理由
「レシピ通りに作ったのに、どうしても本場の味にならない…」
タイ料理を作ったことのある日本人なら、一度は感じたことがあるはずです。
実はこれ、単に“調味料の違い”だけではありません。
タイ料理には、日本の料理文化とはまったく違う「作り方の哲学」があるのです。
その差が、最終的な味の深みや香りの立ち方に大きな違いを生んでいます。
本場の味を再現する近道は、材料でも調味料でもなく、あなたの“料理のマインド”にあります。
タイ料理の味は「包丁」ではなく「叩く力」で決まる
タイのキッチンでは、包丁よりも頻繁に使われる道具があります。
それが「クロック」。
石臼と木の棒がセットになった“叩く・潰すための道具”です。

例えば――
- ソムタム(青パパイヤサラダ)
- ナムプリック類(ディップソース)
- カオソーイのペースト
- スープに入れるニンニクやホムデーン(赤わけぎ)
これらはすべて、包丁で刻むのではなく、豪快に叩いて潰すことで香りが一気に立ち、食材の細胞が壊れ、味がスープや油に移りやすくなります。
◆ なぜ叩くと本場の味になるのか?
叩くことで生まれるのは「不均一さ」です。
- 粗く潰れた部分
- ペースト状になった部分
この“ムラ”が、タイ料理の複雑な味わいを作ります。
日本のように均一に細かく刻むと、香りが立つタイミングが揃ってしまい、味の立体感が出ません。
「細かく切る日本」と「豪快に潰すタイ」の決定的な違い
日本の料理は「丁寧さ」が文化の中心にあります。
- 野菜は均一に切る
- 分量は正確に測る
- 下処理を丁寧にする
これは日本料理の素晴らしさですが、タイ料理ではその丁寧さが逆効果になります。
◆ タイ人の料理スタイル
- 包丁の切り方はザクザク
- 食材はクロックでガンガン叩く
- 「これくらいでいいや」と勘で調味
- 完成のたびに味見しながら調整する
つまり、タイ料理は「即興の料理」。
日本料理が“精密な音楽”なら、タイ料理は“ジャズ”のような自由さです。
タイ料理が短時間で驚くほど味が染みる理由
実際にタイの屋台を見ればわかりますが、作るスピードが異常に早い。
でも、その短時間でしっかり味が決まっています。
秘密は「食材の扱い方」にあります。
◆ 香りが爆発するメカニズム
- ニンニクや唐辛子を叩く → 細胞が壊れ香りが一気に広がる
- ハーブ類を手でちぎる → 切るより香り成分が逃げにくい
- クロックで潰す → 食材のエキスが液体に早く溶ける
この“叩く・潰す・ちぎる”動作が、短時間で香りが移る仕組みを作っているのです。
これこそが、日本で作るときに最も抜け落ちるポイント。
計量しない?タイ料理の“勘”の文化
タイ人は料理するとき、ほとんど計量しません。
「ナンプラーはこのくらい」
「今日は唐辛子1本追加しよう」
「味が薄いからあと少し砂糖」
こんな感じで、味見をしながら足したり引いたりするのが普通です。
とくにタイ料理は、
- クイッティアオ
- ガパオ
- ソムタム
など、その日の気分で味が変わる料理が多い。
この“結果よりプロセスを楽しむ文化”こそ、本場の味につながります。
日本のキッチンでも本場に近づくコツ
「でも日本でやるのは難しそう…」
そう思うかもしれませんが、実は簡単に本場に近づけます。
◆ 今すぐできる本場化テクニック
ニンニクは刻むより“潰す”
包丁の腹で潰して、香りを解放する。
ハーブはちぎる
こぶみかんの葉、バジルは手でちぎると香りが強くなる。
具材の形は揃えすぎない
ザクザク切りでOK。むしろそのほうが味が絡む。
味見をしながら調整する
レシピ通りより、自分の舌で決めるのがタイ式。
できればクロックを使う
2,000円程度で買える。タイ料理の完成度が別物になる。
これらを取り入れるだけで、
「なんか今日、店みたいな味だな!」と感じるはずです。
最後に:本場の味は、マインドから始まる
本場の味を作るために必要なのは、高級な調味料でも特殊なレシピでもありません。
必要なのは――
“タイ人のように料理するマインド” です。
- 正確さより、香りと勢い
- 丁寧さより、豪快さ
- レシピより、自分の舌を信じる
この心構えさえ持てば、日本のキッチンでも驚くほど本場の味に近づきます。
タイ料理は、自由で楽しい料理。
肩の力を抜いて、叩いて、ちぎって、感じながら作ってみてください。
きっと、あなたのタイ料理は今日から変わります。

